LPWAとは、Low Power Wide Areaを略した言葉です。
Low Power=少ない消費電力、Wide Area=広い領域を対象にできる通信ネットワークです。
LPWAのメリットとデメリット
LPWA(Low Power Wide Area)は、低消費電力で広範囲の通信を可能にする技術です。
そのメリットとデメリットをみていきましょう。
LPWAのメリット
LPWAは名前の通り、非常に低い電力で動作するためバッテリー寿命が長く数年間の運用でき、10km以上の長距離通信が可能です。
また、通信費が低く、IoTデバイスの価格も抑えられるため大量のデバイスを導入する際に費用を節約できるうえ、同時に複数デバイスが接続しても、通信の安定性が保たれます。
LPWAのデメリット
LPWAは通信速度が低いため、映像や写真などの大容量データの送受信には向いていません。データ通信量に制限があるため、リアルタイムの大量データ処理には不向きです。
また、基本的に固定された場所での通信が前提となっており、移動しながらの通信は難しい場合があります。
このような特徴をもつLPWAは、センサ情報を定期的に取得するM2Mなどに向いています。
LPWAの種類
LPWAには種類があり、通信帯域により、大きく2つに分類できます。
それぞれの特徴とあわせてみていきましょう。
アンライセンス帯域のLPWA
アンライセンス帯域のLPWAは、無線局免許が不要な帯域を使用する通信技術です。低コストで導入が簡単ですが、通信品質が環境に依存しやすいというデメリットもあります。
LoRa、LoRaWAN、Private LoRa
LoRaはLong Rangeの略で基地局やモジュールなどの物理的な規格で、名前の通り、広域通信が魅力です。
LoRaは伝送速度と受信感度がトレードオフの関係にあり、低速での通信は高受信感度による長距離通信が可能です。
また、送信出力を低く抑えても十分な通信性能が確保できるため、消費電力を下げることが可能です。
ユーザはゲートウェイ(親機)を配置し、半径数キロにある子機とのネットワークが構築可能です。
LoRaWANはネットワーク通信技術の規格で、パブリックなネットワーク構築のためのプロトコルです。
Private LoRaはユーザ自身のプライベートなネットワーク構築のためのプロトコルです。
ユーザによって、通信距離、伝送速度の調整などが可能です。
参照: LoRa Alliance™
SigFox
SigfoxはフランスにあるSigfox社で仕様策定されたLPWA規格です。
低価格、低消費電力、長距離伝送の特長があるグローバルIoTネットワークです。
Sigfoxは1国の国内サービス事業者を1社とする戦略をとっており、日本では京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)が事業者です。
KCCSが基地局の設置を進め、KCCSのパートナー企業を通じてサービスが提供されます。
Sigfoxでは、基地局とクラウドがユーザに提供されます。
ユーザはIoTデバイスを使用して、情報を基地局に送り、クラウド上に転送された情報を活用します。
ZETA
ZETAは、ZiFiSense社が開発したLPWAN通信規格です。
超狭帯域(2kHz)による多チャンネル通信、最大4ホップまで可能なマルチホップ・メッシュ・アクセスネットワークによる分散アクセス、双方向での低消費電力通信の特長があります。
ユーザは購入した機器で、他者の影響を受けないユーザ独自のネットワークシステムを構築できます。
センサから送られた情報はZETAサーバを介して活用できます。
参照: Zeta Alliance
Z-WAVE
Zensys社が開発した無線通信プロトコルです。
通信距離は他のLPWAと比べ30m程度と短いですが、最大4ホップまで可能なルーティングレイヤにより150メートル四方をカバーでき、1ノードにつながる端末は最大232個です。
通信距離が短いため、他のLPWAに比べて伝送速度は早くなります。
Z-WAVEはホームシステムで普及しています。
Zigbeeなどの2.4GHzは電子レンジなどの影響を受け、運用が難しいため、その代案となっています。
他のLPWAに比べ、アライアンスの認定済み製品が多く(2400個以上)、相互運用が可能なことも特長です。
ELTRES(ソニー方式LPWA)
SONY社が開発した無線通信プロトコルです。
長距離安定通信、高速移動体通信、低消費電力が特長です。
ETSI(欧州電気通信標準化機構)の国際標準規格としても採用されています。
GNSSの時間情報を使用した同期通信を行っています。
2018年10月現在、東京都のみの提供であり、これから期待されるLPWAです。
ライセンス帯域のLPWA
ライセンス帯域のLPWAは、通信事業者が国から免許を受けて運用する帯域を使用します。
そのため、通信品質が高く、広範囲で安定した通信が可能ですが、導入コストは高くなります。
LTE Cat.M1(LTE-M)
LTEはダウンロードで100Mbps以上、アップロードで50Mbps以上の普段、携帯電話やスマートフォンで使用している高速回線です。
LTE-Mは3GPPで標準化されているIoT向けの狭帯域通信方式です(1.08MHz)。
既存のLTE携帯電話通信網を活用できることによる通信エリアの広さに加え、省電力性能(既存のLTEに比べ)が特長です。
ハンドオーバ機能を有しており、移動体通信も可能です。
参照: ドコモのLPWA | 法人のお客さま | NTTドコモ
LPWA(Low Power Wide Area) │KDDI IoTポータル
3GPPとは
3GPP (すりーじーぴーぴー、Third Generation Partnership Project) は、W-CDMAとGSM発展形ネットワークを基本とする第三世代携帯電話(3G)システム及びそれに続く第3.9世代移動通信システムに対応するLTEや、第4世代移動通信システムに対応するLTE-Advanced、さらに次の世代である第5世代移動通信システム(5Gと略記されることが多い)の仕様の検討・作成を行う標準化プロジェクトである。
W-CDMA:第3世代携帯電話(3G)の無線アクセス方式の一つ。
GSM:(英: global system for mobile communications) FDD-TDMA方式で実現されている第2世代移動通信システム(2G)規格
LTE Cat.NB1(NB-IoT)
NB-IoT(Category Narrow-Band)は3GPPで標準化されているIoT向け狭帯域通信方式です(180kHz)。
LTE-M同様、既存のLTE携帯電話通信網を活用できることによる通信エリアの広さが特長です。
LTE-Mと比べ、通信速度が遅く、ハンドオーバ機能がありません。
その代わり、機能がシンプルでデバイス自体を小型化・安価に設計できます。
データ量が少ない場合の通信手段として、LTE-Mより安価に使える可能性があります。
LPWAの注意点
LPWAは長距離、低消費電力が魅力な通信ネットワークです。
通信による電池消耗が少ないからと言って、頻繁に通信を行えば、電池の消耗が多くなります。
短距離で使用する場合に、長距離と同じ設定だと、通信に時間がかかり、電池の消耗が多くなります。
機器の稼働時間を長くするには、無駄な通信を減らし、通信距離にあった設定にすることも必要です。
おわりに
LPWAは、LoRa(Long Range)など長距離通信を特長としていますが、電波産業会(ARIB)の標準規格ARIB STD-T108 「920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備」では『Short range communication system』に分類されています。